に、今日あなたは相川という男と一緒に来られたそうですが」
「一緒にったって全く知らん男なんですよ。同じ車に乗ったら急に向こうから私に話しかけるんで、私も退屈凌ぎに相手をしていたわけです。しかし停車場ではとんだ目にあいましたよ。一緒に歩いてくれと云うので、一緒に歩いてやったんですがね。どうも一寸キ印じゃないんですか」
「いや、そうですか、全く御関係はないのですか」
「無論ですよ、何か彼と共犯関係でもあるという御疑いなら御免|蒙《こうむ》りたいものですな」
これは勿論、半分冗談のつもりだったが、共犯関係[#「共犯関係」に傍点]という、或る犯罪を前提にした言葉は彼の為に聊《いささ》か不用意だったとすぐ感じた。果たして署長はやはり半ば冗談らしくこういうのである。
「いや勿論そんな事は思いはしません。しかし、何か彼は大分いろんな事を、あなたに白状したそうですね」
この言葉は、私を疑っているのでない事は明かに判っているけれ共、法律家としてはこれに対してうっかりは乗って行かれない。
「ええ、何かへんな事を云っていましたよ。まあ出鱈目ですね。気狂いじゃないんですか」
私はこう答えると、つづいてこ
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