がらくになった。ひろ子の奴とうとう訴えやがった。……肺炎ですよ。あれが死んだのは! 診断書にだってあったでしょう。ただ私があいつを肺炎にさせただけなんだ。どうだい、刑事君、あいつを雪の中に出して病気にしたんだぜ。うまい殺人法だろう。これも皆この先生(私をさして)におそわったんだぜ。俺は殺人犯人さ。しかし、この先生はその教唆犯人なんだよ。刑事君、しっかりたのむよ」
つかまってからの彼は、犯罪人の常として急に気が楽になったらしく、むやみにしゃべり出すのだった。
私は勿論、二人の刑事も一言も発しなかった。
自動車は夜のT市を走りながら警察署についた。
ここで私は無論、相川俊夫と一旦引きはなされた。東京の某司法官から警察署長にあてた紹介状をもっていたので、私は、わりに丁重に署長室にと通された。署長はその時室に居なかった。
どこかから、不相変どなるような相川の声がきこえている。
やがて署長が見えたので、私は自分が今日来た目的の用事をいろいろ物語った。
しばらくすると司法主任らしい人が出て来て、署長と私語をかわしていたが、司法主任が去ると、笑顔をうかべながら、署長は私に云った。
「時
前へ
次へ
全39ページ中34ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング