教えたのだ」
二人の刑事は改めて私を見たが、
「あなたはどなたですか。この男とどういう関係があるのです」
とたずねるのである。私はこれに答える義務はない筈なのだが何分相川の発した絶叫は群集をあつめるのに十分なので、長くなっては事面倒と手早く、職業用の名刺を出し、更に、
「僕もどうせ警察へ行くつもりなんです。署長に会うつもりなんですから。この男とは全く関係はないのですが、ともかく、この男にあなたの方で用があるなら、私も一緒にタクシーででも一緒に署まで行きましょうよ。何分こんな所でわめかれては私も堪りませんから」
私の名刺がどんな力を刑事に与えたか、与えなかったかは私の知る所ではない。彼らは私と相川との関係をどう思ったか知らないが(この場合、相川を私の依頼人なりとし、私をその弁護人なりと信じたかも知れない)ともかく、私の提議には異議がないらしく、構外に出るとすばやくタクシーをよんでくれ、相川を三人でかこんで、無理やりにのりこんだため、停車場で群集のさらしものになるのは辛くも逃れ得た。
自動車の中では相川一人が気狂いのようにしゃべりまくっていた。
「恐ろしい事だ。しかし今となっちゃ気
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