をさらしながら、自分では少しも寒くなかったような気がするのです。
妻が帰って来ては事面倒ですから、暫時《ざんじ》にして私は家に入りました。再び暖い着物をきせて、自分はゴロリと横になりながら、何くわぬ顔をして妻の帰りを待っていたのです。
私は、この悪魔的方法の効果がすぐ現われるかと思って居ました。けれど翌日になっても別にどうもないのです。次の日は雪はやみましたが寒さは一層加わりました。この夜、同じような機会に又同じ方法で、ひろ子を寒風に曝《さら》したのです。雪の上におく事も考えないではありませんでしたが、もし凍傷《とうしょう》でも出来ると証拠が残ると思ってこれはやめました。
二回の試みは遂に成功しました。ひろ子はその晩から非常な高熱を出しました。私には、無論そのわけは判っていましたが妻にははじめよく判らなかったらしいので、結局、医者がかけつけたのはその日の夕方になってしまったのでした。
医者は無論、私が呼びに行ったのです。この際医者を呼ばないわけには行きません。かけつけた医者は即座に流行性感冒と診断しました。県下に、はやって居るこの病気に私の子が罹る事は少しも不思議ではありません
前へ
次へ
全39ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング