数ヶ月の獄舎生活をはじめる事になったのである。
 然し当局は、彼の過去について捜査を開始した。彼がプランシェ夫人をおそった動機から考えて似たような犯罪があるにちがいないとにらんだのである。
 ジュルナール・ド・ヴァランスの記事はベリーのマジストレートのフーケー氏の注意を著しくひいた。実にフーケー氏は、二年前即ち一八九五年の八月にブノンスで行われた殺人事件の犯人を極力捜査して空しく手をひいた人である。ブノンスの殺人事件というのは、牛飼いのヴィクトル・ポルタイエという少年が、のどを切裂かれ腹をえぐられて見るも無惨な死体となって牧場で見出された、という事件であった。当時嫌疑のかかったのは、アルデシュという浮浪人で、その惨劇の前夜、現場付近をうろついていたという男によく似ていたのだった。而てこの男の人相は又、一八九五年五月にオー・ドュ・シェーンという所で十八歳になるオーギュスチヌ・モルチュリューという少女の殺人犯人の人相にもあてはまっていた。
 そこでベリーのマヂストレートは直《ただち》にヴァッヘルを送らして自ら之を訊問したが、彼はついにヴァッヘルをして恐るべき犯罪を自白せしめたのである。その
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