の短い狛犬《こまいぬ》はポチに噛ませてやりませう
糸のたるんだ風船と空気のぬけた護謨毬《ごむまり》はタマに噛ませてやりませう
弾機《ばね》の廻らぬ自働車[#「自働車」に「(ママ)」の注記]は銑葉《ぶりき》の台へ載せたまま馬車に轣かせてやりませう
翼《はね》のゆがんだ木兎《みみづく》は牛に踏ませてやりませうか、馬に踏ませてやりませうか、うしろの沼へ捨てませうか
飛べなくなつた飛行機と共に窓から投げませう
硝子《がらす》の中の人形も明日《あす》はお暇《いとま》やりませう
何《ど》つかの島へ着くやうに
島の人形になるやうに
桐の小函に帆をかけて――大川の水に流してやりませう
[#1字下げ]蝙蝠[#「蝙蝠」は大見出し]
蝙蝠《かうもり》よ、蝙蝠よ
井戸端に蚊柱が立つてゐる
早く来て喰はないか
蝙蝠の家は何処だ
山か里か
何故|咄《はな》さぬ
蚊柱が立たば
迎ひに行くぞ
すぐに来て喰へよ
呼んでも、呼んでも
蝙蝠は居ない
臍をまげて隠れてゐる
臍をまげた蝙蝠に
蚊柱は喰はせるな
早くバケツで水かけろ
螢の親父が飛んでゐる
蚊柱が立つても
蝙蝠に咄すな
呼んでも呼んでも来ない
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