曼陀羅華」は大見出し]
何処から種が飛んで来たのか
畑の中に
曼陀羅華《まんだらげ》が生えてゐる
百姓は
抜いて捨てようと思つてゐる中に
夏が来た
曼陀羅華は
葉と葉の間《あはひ》から
白い花を咲かうとしてゐる
百姓は
花なんか咲かせて置くもんかと
独言《ひとりごと》を云つてゐた
たうとう秋になつて了つた
曼陀羅華の花は
すつかり実になつてゐる
百姓は憤つて――手をかけると
皆んな実は畑の中へ
ぱらぱらはぢけて飛んだ
[#1字下げ]二人[#「二人」は大見出し]
歳の暮れも押し迫つて来てゐるのに
間借りしてゐる二人は
これからさき、どうすればいいのか
途方にくれてゐる
二人は
小さな火鉢を中にして
痛切に――お互に――暮しませうと云つてゐるが
矢張り涙にくれてゐる
二人は
昨夜《ゆふべ》も、同じやうな夢を見た
銀貨だの、米だの、肉だの、炭だの
凩《こがらし》は屋根を鳴らして吹いてゐる
[#1字下げ]家鴨[#「家鴨」は大見出し]
うしろの田の中に家鴨の子が
田螺《たにし》を拾つて喰つてゐると
雁《がん》が来た
一所に連れてつてやるから
勢一杯|翼《はね》をひろ
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