かま》つて泣いてゐると
親蛙は田の中から跳ねて来て
一所に連れて帰つた

怖い百姓の足が毎日田の中に這入つて来た
百姓はたうとう子蛙の居所までも
跡方なしに耕して了つた

それでも子蛙は生れた田の中が
自分の家だと思つて居たら
皆な怖い足の百姓のものだと親蛙に聞かされた


[#1字下げ]手[#「手」は大見出し]

若い女は
水菓子屋の表に立つて
パイナツプルを買つてゐる

若い男は
店の中にはいつて
パイナツプルを買つてゐる

男が取り次いでくれた
パイナツプルを受けとるとき
女の手が顫えた

男の手
女の手
女の手は顫える


[#ここから1字下げ]
[#ここから大見出し]
畑ン中
   (ある農夫の歌の VARIATION)
[#ここで大見出し終わり]
[#ここで字下げ終わり]


真昼間でごわせう
畑《はたけ》ン中に、田鼠《むぐらもち》が一匹
斑犬《ぶち》に掘りぞべられて
イヤハヤ
むんぐらむんぐら居やあした
畑の土は、開闢《かいびやく》このかた、黒いもんか
どなもんか
真《まこと》の所、烏に聞いて見やあすべい

畑ン中は、青空天上、不思議はごわすめえ
喉笛鳴らした、ケーケーケ
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