2字下げ]六蔵[#「六蔵」は中見出し]
六蔵が家の前に立つて
田の稲を眺めながら
群雀《すずめ》のことを考へてゐると――
群雀の一団《ひとかたまり》が飛んで来て
稲の上に
かぶさるやうに下りた
六蔵は駈けて行つて鳴子《なるこ》の綱を引つ張つた
群雀はパツと飛び上つて行つて了つた
こんな日が幾日も続いた
田に稲がなくなると群雀は来なくなつた
六蔵は何んにも考へずに
寝そべつて煙草を吹かしてゐる
[#2字下げ]米松[#「米松」は中見出し]
米松《よねまつ》が鍬を担いで野良から
昼餉《ひる》に帰つて来た
裏戸が開けつ放しになつてゐる
鶏が竈《へつつい》の上へあがつて
鍋の中から
麦飯をつつき散らして喰つてゐた
隣の金《きん》が家に小間物屋が来てゐる
嬶《かかあ》の笑ふ声が聞えた
米松は忌々しげに泥手で煙草を吸つてゐる
嬶は西瓜《すゐくわ》を喰ひながら
帯の間《あはひ》に巾着《きんちやく》の紐をぶら下げて帰つて来た
鶏が厩の前へ駈けて来て立つてゐる
[#1字下げ]娘と劉さん[#「娘と劉さん」は大見出し]
[#3字下げ][#中見出し]※[#ローマ数字1、1−13−21][#
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