不仕合せな人だらう』と涙ぐみました。おたあちやんの眼にも涙が一杯浮んで来ました。
おたあちやんは、次の日から、湖の岸の水神様《すゐじんさま》のお宮へお願《ぐわん》をかけました。
――水神様、どうかおきいちやんを救つてあげて下さい。ほんたうにわたしがわるかつたのです。三又|土筆《つくし》がなかつたら、こんなにわたしは苦しい思ひはしなかつたでせう、ほんたうにわたしがわるかつたのです。水神様、どうぞおきいちやんを救つてあげて下さい――
かうしてゐるうちに、いつとはなしに、向ふの村から、こつちの村へ往き来してゐる船頭達の間にこんな唄が謡《うた》はれるやうになりました。
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湖《こすゐ》の風は
何んと云つて吹いた
明日《あした》は 帰ろ
生れた村へ
湖の風は
どこから吹いた
機屋の背戸の
薮から吹いた
[#ここで字下げ終わり]
(六)
水神様《すゐじんさま》のお宮は、湖の岸の、杉の大木の茂つた丘の上にあつて大変見晴らしのよい所でした。天気のいい日には、湖を越えて、ずつと向ふの村まで見渡されるのでした。
おたあちやんは、お宮の境内から向ふの村を眺めて
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