悔しました。いつそ、おたあちやんにあげて了はうかと思ひました。おたあちやんが、不図《ふと》見ますと、おきいちやんの提《さげ》てゐる籠の一番上に、憎い憎い三又土筆が載つてゐました。おたあちやんは、急に悪い気になつて、その三又土筆を掴むなり小川の中へ抛《はふ》り投げて了ひました。
『あらツ』と云つて驚いた途端《はづみ》におきいちやんは、ずるずると足を辷らして堤《どて》から小川の中へすべり落ちました。
おたあちやんは、後も見ずに堤の上を駆け駆け一生懸命に家まで帰りました。お母さんは心配して表へ出て居ました。
『おきいちやんは、どうしたの』とお母さんから訊《き》かれたとき。
『前《さき》に帰つたんだわ』と云つて、なんにも知らない振りをしてゐました。
(四)
あくる日になつて、いつもかかさずに遊びに来るおきいちやんが来ませんでした。
『おまへ、おきいちやんと喧嘩でもしたんぢやないのかい』とお母さんは自分が云ひ出した三又土筆のことから、二人の仲よしが、仲の悪い悪い二人になつたとは知らずに訊きました。
『ううム』『ううム』とおたあちやんは頭を横に振つてゐました。
そのあくる日も、そのあ
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