食べました。
『三又土筆て、ほんとにあるのか知ら、おきいちやんどう思つて』
『わたしは、あると思ふわ』
『さう、わたしなんだか判らなくなつてよ』
『だつて、まだこれからだもの』
お互に摘んだ土筆を見せ合つたりなんかして、又二人は摘みはじめました。
さうして、日が余ツぽど西へ傾く頃までには二人の小さい籠は土筆で一杯になりましたが、見つけたいと思ふかんじんの三又土筆は見つかりませんでした。
おたあちやんは、もう飽き飽きして『帰りませう、帰りませう』と云ひましたが、おきいちやんは『もう鳥渡《ちよつと》、もう鳥渡』と云つて矢張り摘んでゐました。
『わたし、もう草足《くたびれ》たんだもの』とおたあちやんは摘むことをやめて立つて見てゐました。すると、おきいちやんは、
『おたあちやん、あつてよ、あつてよ、ほら三又|土筆《つくし》だわ』と云つて、うれしさうに叫びました。
(三)
おきいちやんが見つけた三又土筆を見て、おたあちやんは
『まあ』と云つて、あとの言葉が出ませんでした。そして口惜さうな顔をして、おきいちやんの顔を見ました。おきいちやんは、あんまりのことに吃驚《びつくり》して、気
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