た。そして云ひました。
『土筆を採りに行つたら、気をつけておいでよ、三又土筆と云つて一つの茎から三つの土筆が出てゐるのがあるかも知れないからね。そんなのは滅多にないのだけど、ひよつとしたらあるかも知れないよ、昔から三又土筆を見つけた人は、出世すると云つてゐるから探して御覧』
出世すると云はれて、二人の大《おほき》くみひらいた眼には、一層喜びの色があらはれました。
『わたし、なんだか三又土筆てのを見つけるやうな気がしてよ』とおたあちやんは行く途々《みちみち》云ひました。
『さう、わたしもそんな気がするわ』
おきいちやんも負けん気になつて云ひました。
『ぢや、二人とも見つけるのね』
『そして二人共出世するのよ』
『オホホホオホホホ』
『オホホホオホホホ』
二人はたわいもなく笑ひ興じながら村境を湖の方へ流れてゐる小川の堤《どて》へまゐりました。そこから二人は堤に添ふて、はしやぎながら土筆《つくし》を採つてゆきました。
一丁ゆき、二丁ゆくうちに、いつの間にかだんまりになつて、先へ先へと土筆を採り採りゆきました。
お昼頃になると、二人は堤の上へあがつてお弁当のお握飯《むすび》を出して
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