て居りました。
 さて、この湖の一方の村に、おたあちやんと、おきいちやんといふ、それはそれは仲のよい友達がありました。二人とも同じ歳の九つでした。
 二人は、姉妹《きやうだい》のやうに、いえいえ姉妹よりも、もつともつと仲よしでした。それに顔や姿までが、どことなく似てゐたものですから、村の人達は双児のやうだとよく云ひました。
 しかし、おたあちやんの家は、どちらかと云へば、村でも金持ちの方でしたが、おきいちやんの方は貧乏な家でした。また、おたあちやんには、本当のお父さんも、お母さんもありましたが、おきいちやんには、それがありませんでしたから、赤ン坊の時から伯父さんや伯母さんの手で、やしなはれて来たのでした。
 この平和な村にも春はおとづれて来ました。機屋《はたや》の窓にも、湖の上にも、陽炎《かげろふ》がゆらゆらと燃えはじめました。
 二人の仲よしは、芹だの、蓬《よもぎ》だのと、毎日のやうに、湖に沿ふて遠くまで摘み草に出掛ました。

  (二)

 ある日、二人の仲よしは、土筆《つくし》を採りに行くことになりました。おたあちやんのお母さんは、いつものやうに、二人にお弁当をこしらへてくれまし
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