て居りました。
さて、この湖の一方の村に、おたあちやんと、おきいちやんといふ、それはそれは仲のよい友達がありました。二人とも同じ歳の九つでした。
二人は、姉妹《きやうだい》のやうに、いえいえ姉妹よりも、もつともつと仲よしでした。それに顔や姿までが、どことなく似てゐたものですから、村の人達は双児のやうだとよく云ひました。
しかし、おたあちやんの家は、どちらかと云へば、村でも金持ちの方でしたが、おきいちやんの方は貧乏な家でした。また、おたあちやんには、本当のお父さんも、お母さんもありましたが、おきいちやんには、それがありませんでしたから、赤ン坊の時から伯父さんや伯母さんの手で、やしなはれて来たのでした。
この平和な村にも春はおとづれて来ました。機屋《はたや》の窓にも、湖の上にも、陽炎《かげろふ》がゆらゆらと燃えはじめました。
二人の仲よしは、芹だの、蓬《よもぎ》だのと、毎日のやうに、湖に沿ふて遠くまで摘み草に出掛ました。
(二)
ある日、二人の仲よしは、土筆《つくし》を採りに行くことになりました。おたあちやんのお母さんは、いつものやうに、二人にお弁当をこしらへてくれまし
前へ
次へ
全13ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
野口 雨情 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング