ち》も、仲よしであつた頃のおきいちやんの云はれたことが思ひ出されて、仕方がなかつたのでした。
それから間もなく、おきいちやんが、機場《はたば》で亡《なくな》られたと云ふ話を聞きました。おたあちやんがお宮の境内で大きな虹の橋を見た日が丁度その日だつたのです。
湖の船頭達は、いつどこから聞いて来たのか、又こんな唄を謡《うた》ふやうになりました。
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湖《うみ》の向ふのあつちの国の
花が欲しくば
唄聞きたくば
赤い草履《ぞんぞ》はいて
虹の橋渡れ
湖の向ふのあつちの国の
花が見たくば
唄恋しくば
赤い下駄《かつこ》はいて
虹の橋渡れ
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(七)
虹の橋は湖の上へ幾度もかかりました。
虹の橋のかかるたび、おたあちやんは、きつと水神様《すゐじんさま》のお宮へいつてゐました。
――水神様、あの虹の橋を渡つて天の御殿へゆけるやうにわたしをして下さい。わたしは、おきいちやんの傍へゆきたう御座います、どうかわたしの願ひをききいれて下さい ――
いつも斯う云つてお祈りをしてゐるうちに、おたあちやんの心はだんだん浄められて水晶のやうになりまし
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