た。
心がだんだん澄んで来るにつれて、虹の橋の上に、これまで見えなかつた美しい天の御殿が見えるやうになつて来ました。それが一日毎にはつきりして来ました。
天《そら》の御殿からは、天人が謡《うた》ふ、長閑《のどか》な楽《たのし》い唄が聞えて来ました。
おたあちやんは、うつとりと聞きとれるのでした。と、
『おたあちやん、おたあちやん』と呼ぶ声がしました。
『あ、おきいちやんの声だ、おきいちやん、おきいちやん、勘忍して頂戴、わたしも御殿へまへりますよ、いままへりますよ。おきいちやん、おきいちやん勘忍して頂戴』
おたあちやんは、気狂《きちがひ》のやうに同じことを幾度も幾度も繰返して口ばしりました。
それから幾日もたたないうちに、おたあちやんの姿が見えなくなりました。
虹の橋も、いつとなく小さいのしか、かからなくなつて了ひました。
さうすると、また、船頭達の間に、こんな唄が謡《うた》はれるやうになりました。
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湖《こすゐ》の上さ
天まで続く
虹の橋かけた
ふりわけ髪の
二人の子供
渡つて行つた
赤い下駄《かつこ》はいて
赤い草履《ぞんぞ》はいて
手々ひい
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