蔭で逢ひませう
[#1字下げ]榧の木[#「榧の木」は中見出し]
赤い花を今日も一人で見てゐると
ふるさとの
若い女がたづねてでも来さうな気がする
ふるさとの
若い恋しい女達よ
五年六年逢はないが
河原の岸の枯れ蘆は芽もふかず花も咲かずにしまつたか
おみよ娘も十七か八九位になつたらう
おれが家の裏の畑の
榧《かや》の木に
今も鶫《つぐみ》が来て啼くか
鶫の啼くを聞くたびに
ふるさとの
畑の中の榧の木が
思ひ出されて限りなく
涙が出るぞ
女達
[#改段]
港の時雨[#「港の時雨」は大見出し]
[#1字下げ]港の時雨[#「港の時雨」は中見出し]
蛇の目傘に
時雨が降るに
月日かぞへて
港を見てる
待つはつらかろ
待たるる身より
伏木港の
船頭さん達よ
[#1字下げ]仇花[#「仇花」は中見出し]
月に一度も
逢はずにゐても
かはい サロンの
あの仇花よ
はなればなれに
暮してゐても
恋は濃くなる
浮名は流る
[#1字下げ]後姿[#「後姿」は中見出し]
うしろ姿のさびしいは
心で泣いてゐるからさ
田舎娘でゐた頃は
可愛姿でゐたんだよ
末枯《すが》れてかな
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