りを
出しただろ
[#1字下げ]沙の数[#「沙の数」は中見出し]
汐がれ浜で聞く唄は
みんな悲しい
唄ばかり
沙の数ほどかぞへても
別れた人は
帰らない
涙ぐましくなつて来て
泣かずに 泣かずに
ゐられよか
[#1字下げ]夜さり唄[#「夜さり唄」は中見出し]
駄目ぢや 駄目ぢやと
話も聞かず
話どころか 姉上さまよ
歳も 歳だし
何うした ものぢや
男振りでも
よければ よかろ
[#1字下げ]君が名[#「君が名」は中見出し]
『別れ』と云ふ字がかなしくて
火鉢の中に 書いて消し
消しては書いて
泣きました
『消して書いても
過ぎし日の
今ははかない
空だのみ』
『口に甘いは
いつはりの
人の言葉と
露しらず』
『処女のほこりも たはむれの
幻《まぼろし》よりも
淡かりし』
かなしきままに 君が名を
火鉢の中にいくたびも
書いて 眺めて
泣きました
[#1字下げ]菖蒲の花[#「菖蒲の花」は中見出し]
菖蒲《あやめ》の花に
初夏の
君の姿が偲ばれる
君の姿は
初夏の
咲いた菖蒲の花でした
厩《うまや》の背戸に
しよんぼりと
咲いた菖蒲の花でした
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