十七頃は
いつも涙で
しめつてゐるのし
それが聞きたい
傘《からかさ》の下《した》で
雨の降る日に
生れたのかよ
[#1字下げ]鴫[#「鴫」は中見出し]
田は枯れて 了つたし
どこも ここも
寒い風が吹いてゐる
日暮方になると 田甫の中で
すイ すイと
鴫が 啼いてゐた
おもよは 赤い花|簪《かんざし》をさして
家の前に
出て見てゐた
細い声で 鴫は
すイ すイと
啼いてゐる
おもよの 心も
初恋に
すイ すイとしてゐた
田は枯れて了つたし
どこも ここも
寒い風が吹いてゐる
[#1字下げ]たそがれ[#「たそがれ」は中見出し]
蘭菊の花はさびしい
川越の
「小料理店」と書いてある
「小料理店」と書いてある
蘭菊の
花はさびしい 一夜妻《いちよづま》
たそがれ頃に とぼされる
川越の
鼠鳴きしてゐた女
[#改段]
錆[#「錆」は大見出し]
[#1字下げ]錆[#「錆」は中見出し]
窓の格子に よりかかり
「いつまた来るの」と
泣く女
錆《さび》た庖丁の かなしくも
「はかない身だよ」と
さうか知ら
ただ明け易い 夏の夜の
街はあかるい
青すだ
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