たり
翼あらむか空ゆくに
瞳あらむか物見むに
いづれ羽根なき翼なき
なれは盲目《めしひ》の土の精
夕《ゆふべ》さびしき草の戸の
雲にこぼるる星影を
市《いち》に行くべき虫ならば
さこそ思《おもひ》も清からじ
嗚呼《ああ》[#「嗚呼《ああ》」は底本では「鳴呼《ああ》」]有情《うぜう》の萬象《もの》の子よ
慰藉《なぐさ》に唄ふひとふしも
げに東雲《しののめ》の近づけば
塵と埃《あくた》に甘眠《うまい》せむ
朝は静けき太陽《あまつひ》の
繊雲《ほそくも》とほく照しつつ
白露しげき草の葉に
あはれなが世の幸《さち》ありや
なれの姿は醜くも
ものの悲しき音《ね》にふれて
細く妙なる美《よ》きこゑを
聞けば胸こそすみ渡れ
人の生活《いのち》の戦《たたかひ》も
あはれ声なき夜の陣
いのりに眠るなが唄の
曲《ふし》に律ある闇の韻
[#1字下げ]それは去年の昨日まで[#「それは去年の昨日まで」は中見出し]
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三十七年暮の二十七日、吾不運を嘆きつつ日没の海辺をさまよひて、同じおもひにありと聞く古河の思水子に寄す
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