#ここで字下げ終わり]
風は颪《おろし》で
寒からむ
幾夜の夢や
時雨《しぐ》るらむ
それは去年の昨日《きのふ》まで
俗に落ちなば死すべしと
鎗《やり》は錆ても武士《さむらひ》の
鷹になるべう志
彼《か》の青空を眺めては
空かけ渡る羽なくも
必ず鷹になる身ぞと
楽《たのし》みたりし甲斐なさよ
詩人は銭《ぜに》を惜むなと
それやこれやに呵《しか》られぬ
されどうがらが生活《なりはひ》を
思はぬ訳にはなり申さず
お銭《あし》と申すしれものに
百のしもどを打《たた》かれて
ああ徒《いたづら》に手をもがき
足をもがいて詩《うた》ならず
弦《つる》にはなれし弓の矢の
月日立つのは早けれど
終《をはり》はすべて
涙なり
底本:「定本 野口雨情 第一巻」未来社
1985(昭和60)年11月20日第1版第1刷発行
底本の親本:「枯草」高木知新堂
1905(明治38)年3月14日刊
初出:村の平和「労働世界」
1902(明治35)年7月3日
鬼のお主「常総新聞」
1905(明治38)年1月1日
花壇の春「暗潮」
1903(明治36)年9月
※底
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