枯草
野口雨情

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)童《こ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)海|鴎《どり》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ページの左右中央]
−−

[#ページの左右中央]


  花も実もなき枯草の一篇わが親愛なる諸兄に捧ぐ


[#改ページ]

[#1字下げ]毒も罪も[#「毒も罪も」は中見出し]

草に咲くさへ
毒の花
罪の花みな
紅からむ

羽うるはしき
例の童《こ》が
罪の矢ならば
美《よろ》しかろ

唇《くち》にふれなば
倒るべき
毒の花なら
甘からむ


[#1字下げ]村の平和[#「村の平和」は中見出し]

雲の香《か》沈む有明の
月の森よりそと出でて
麦の緑の岡に立ち
見るよ平和の村の朝

霞の中に黄金色《かねいろ》の
菜種の花は咲きにしが
葦の芽に降る春雨の
そそぐ韻《ひびき》も聞きにしが

麦の葉に吹く曙の
風は東にそよそよと
朝の香深き岡なれば
夢美しく眠るらむ

平和の村は有明の
み空に懸る雲の幕
雲の幕よりほころびて
草に甘露の霧が降る


[#1字下げ]佐渡が
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