るなら
佐原|来栖《いけす》に
お茶屋がござろ
姉さ召しませ
のう姉さ
花の乙女《かむろ》が後朝《きぬぎぬ》の
涙の雨が降るぞえの
一夜《いちよ》かりねの
手枕に
かりの妻ぢやと唄はれて
明日は何方《いづく》の何処ぢややら
皐月《さつき》照れ照れ
菖蒲《あやめ》も植ゑよ
お女郎《じよろ》見やんせ十六島は
雨の降るのに花が咲く
[#1字下げ]闇の韻[#「闇の韻」は中見出し]
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月なき秋の夜なぞ茄子枯れたる畑中に鳴く虫あり世人俗に蚯蚓の鳴くなりと言ふ
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あはれ蚯蚓《みみづ》とあざけれど
背戸に人待つ少女子《をとめご》が
首うなだれて闇の夜に
聞くよ淋しき汝《なれ》が唄
見よ閨《ねや》の戸の夕間ぐれ
あふぐになれし星の海
されど心の香《か》に酔うて
よしなきことを思ふかな
闇の潮《うしほ》に沈みたる
静夜《しづよ》の夢はさまさずも
夜鳴く虫のかなしさに
忘れがたきがあればなり
春の名残の
時の上に
紅き花こそ
惜みたれ
夏の流れの
行く水に
真白き花も
咲きに
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