は消えて
幼きものよと子鼠の
幾ともがらは忍び来ぬ
されども家人《ひと》は知らでありき
雛《ひえ》さまの雛さまの
鼻かぢられて哀れなり
緋桃の花は散りけりと
次の朝《ひ》下婢《はしため》あはて告げぬ
[#1字下げ]めくら魚[#「めくら魚」は中見出し]
日の暮方に
空見れば
いつも敢果《はか》ない
事ばかり
すすき尾花は
穂に咲けど
秋の花ゆゑ
淋しかろ
恋はすれども
恋わすれても
めくら魚で
阿漕《あこぎ》が浦よ
[#1字下げ]乙女のひとり[#「乙女のひとり」は中見出し]
朝見れば東の海に
紋波《あやなみ》の低きはあれど
浮雲の白きも見えず
海|鴎《どり》は沖に飛べども
わたつみの彼方《かなた》の岸に
羊《しつち》飼ふ童もありや
あかつきの東の浜に
朝空のみ神とばかり
さまよへる乙女のひとり
うら若き身にありながら
黒髪は裳裾《もすそ》にかかれ
徒《いたづら》に嘆くは止《や》めよ
今朝《けさ》見れば東の海の
天地《あめつち》に雲はなけれど
又しても乙女はひとり
さまよへるかな
[#1字下げ]十二橋[#「十二橋」は中見出し]
ほんに潮来《いたこ》へ
おじや
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