て
はしらの宮のみ使《つかひ》の
鴎は雲にまぎれ飛ぶ
[#1字下げ]それはお無理と申すもの[#「それはお無理と申すもの」は中見出し]
閨《ねや》の襖に紫の
ゆかりの幕を垂れこめて
如何にお嘆き遊ばすも
それはお無理と申すもの
夜はまばゆき
金屏《きんべい》に
姫はよき衣《きぬ》
かつげども
谷の峡《はざま》の
うむれ木の
世にふるものよ
いたはしき
眉の薄きは濃くならず
鼻の低きは生れつき
如何にお嘆き遊ばすも
医者に薬はあらざらむ
お色黒くば鴨川の
水にしばらく召し給へ
唇《くち》には京の下《しも》町の
臙脂《えんじ》ほどよくさし給へ
あはれゆかしきみ住ひの
玉のうてなの閨の戸に
如何にお嘆き遊ばすも
それはお無理と申すもの
[#1字下げ]あはて告げぬ[#「あはて告げぬ」は中見出し]
雛祭りする九歳《ここのつ》の
お竹は又も思ひけり
桃の花 桃の花
雛さまと何語る
去年《こぞ》も今年も
一昨年《をととし》も
物めしまさぬ
優しさよ
日は永くして雛様の
欠伸《あくび》に暮るる三ヶ日
夜《よ》は短くて桃の花
ねむた顔なる春の宵
一夜《あるよ》雛壇《ひなだな》灯
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