葉ゆらぐ陰《かげ》にさまざまの
小《ちさ》き蕾も見ゆるかな
ある夜春雨草の葉の
緑いろよくそそぎしが
あくるあしたの夕《ゆふべ》より
つぼみは花と咲きにたり
花壇の土の美しく
今こそ花は開きたれ
春の日燃ゆる炎陽《かげらふ》に
花の露の香《か》ゆふべも消ゑじ
[#1字下げ]恋の娘は何誰でござる[#「恋の娘は何誰でござる」は中見出し]
お竹お十七
暮の春
泣いて別れた
事もあろ
三十九でさへ花ぢやもの
お十七ではまだ蕾
花の蕾の身であろに
なんで浮世が嫌ぢややら
ほんに去年のわづらひは
町のお医者を頼まれ申し
お医者よけれど嫁さに行かば
恋の娘と名に立てられむ
恋の娘は何誰《どなた》でござる
お釈迦さまではあるまいし
甘茶にするのは
罪ぢやもの
お竹お十七
暮の春
泣いて別れた
事もあろ
[#1字下げ]踏青[#「踏青」は中見出し]
霞の幕はたなびきて
春は土佐絵の山桜
君よ青きを踏み玉へ
いざ野に出でて踏み玉へ
春のよき日は麗《うららか》に
こがねの雲の日は燃ゑて
野にも山にも流《ながれ》にも
百千《ももち》の鳥はさけぶめり
君よ青きを踏み玉へ
いざ野に出《
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