と降りしきる

鴨川の 河原に啼いた
河千鳥
君と別れた路次口に
雨はしきりと降りしきる


[#1字下げ]お糸[#「お糸」は大見出し]

雑木林の
啄木鳥《たくぼくてう》は
杉の枯れ木を
啄《つつ》いて啼いた

杉の枯れ木を
啄木鳥は
無性《むしやう》 やたらに
啄いて啼いた

掛けた襷の
解けたも知らず
涙うかべて
お糸は見てた


[#1字下げ]霜枯れ[#「霜枯れ」は大見出し]

裏の田甫《たんぼ》で
鴫《しぎ》がゆふべ啼いた

ささげ畑の 暴風《あらし》の晩も
君は忍んで 逢ひに来て
呉れた

裏の田甫で
鴫がゆふべ啼いた

鴫も田甫も霜枯れだけど
君は今夜《こよひ》も 逢ひに来て
呉れよう


[#1字下げ]螢草[#「螢草」は大見出し]

垣根の外に
来ては泣く
故郷《ふるさと》の
恋しい唄に聞きほれて
垣根の外に
来ては泣く

下野《しもつけ》の 機場《はたば》に
しぼむ螢草《ほたるぐさ》
垣根の外に
故郷の
恋しい唄を
聞いて泣く


[#1字下げ]小室の小笹[#「小室の小笹」は大見出し]

裏戸覗いて 裏から
帰る
紺の前掛 麻裏《あさうら》草履

あなた一人に
情《じ
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