との
国へ帰れば
皆恋し


[#1字下げ]枯れ山唄[#「枯れ山唄」は大見出し]

潮来《いたこ》出島の
五月雨《さみだれ》は
いつの夜の間に
降るのだろ

枯れて呉れろと
枯れ山の
風は幾日
吹いただろ

常陸《ひたち》鹿島の
神山《かみやま》に
己《おれ》が涙の
雨が降れ


[#1字下げ]土蔵の壁[#「土蔵の壁」は大見出し]

わたしの胸の
恋の火は
いつになつたら
消えるだろ

竈《かまど》の土は
樺色《かばいろ》の
焔に燃えてをりました

君はたしかに
夕暮の
野に咲く花の
露でした

土蔵の壁に
相合《あひあひ》の
傘にかかれてありました


[#1字下げ]儚き日[#「儚き日」は大見出し]

君のたよりの
来た日から
かなしい噂がたちました

水に流して呉れろとは
夢と思への
謎か知ら

走り書きだが
仮名文字《かなもじ》で
「涙」と記してありました

水に流して呉れろとは
熱い涙の
ことか知ら


[#1字下げ]祇園町[#「祇園町」は大見出し]

友禅の 赤く燃えたつ
祇園町《ぎをんまち》
銀の糸の
雨は斜《ななめ》に降りしきる

渋色の 蛇の目の傘に
降る雨も
上に下に
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