[#1字下げ]白露虫[#「白露虫」は大見出し]
かげろふの
あしたはまたぬ命だと
たよりは来たが
どうしよう
ひとつにはまたひとつには
かすかに白き
花でせう
しよんぼりとまたひとつには
さびしく咲いた
花でせう
かなしくもまたふたつには
涙に咲いた
花でせう
かげろふの
糸より細き命だと
たよりは来たが
どうしよう
[#1字下げ]雁[#「雁」は大見出し]
今朝《けさ》も 南へ
下総《しもふさ》の
雁《かり》が啼き啼きたちました
さらば さらばと
下総の
風の吹くのにたちました
親と別れた
故郷《ふるさと》の
空を見てゐた雁でせう
旅の身ゆゑに
下総の
風の吹くのにたちました
[#1字下げ]濡れ乙鳥[#「濡れ乙鳥」は大見出し]
逢ひはせぬかよ
十六島で
潮来《いたこ》出島の
ぬれ乙鳥《つばくら》に
潮来出島の
ぬれ乙鳥は
いつも春来て
秋帰る
[#1字下げ]空飛ぶ鳥[#「空飛ぶ鳥」は大見出し]
赤いはお寺の
百日紅《ひやくじつこう》
白いは畑の
蕎麦《そば》の花
空飛ぶ鳥ゆゑ
巣が恋し
別れた子ゆゑに
子が恋し
木瓜《ぼけ》の花咲く
ふるさ
前へ
次へ
全34ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
野口 雨情 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング