於て、大變重要な觀察をして居るのである。元來記注といふものは、前言往行を忘れない爲めにするものであるが、その記注には必ず事實あつたことをそのまま書く法則を立てて、さうして遺漏なく之を傳へなければならぬ。それは即ち材料として記録されて貽されて居るのであつて、それが著述となつて現はれる場合は撰述無定名であつて、その記録の中から自分の好む所の題目によつて、各※[#二の字点、1−2−22]然るべき著述をしてよいのである。その目的に從つて、例へば尚書の召誥・洛誥の如く、周の時代の都を奠めたことを書かうと思へば、その記録の中から都を奠める上に就ての必要なる事實を拾ひ出して、さうして最も適當な方法でそのことを著述すればよろしい。或は又康誥などの如く、天子が自分の親族を諸侯に封じたりすることを、教訓として後に貽さうと思へば、それに關する始末を記録の中から拔出して、さうして一つの著述とする。著述は如何樣な體裁でもよろしいのであるが、その根本たる記録は一定した正しい根據から成立たなければならぬ。これが昔の方法であつて、後世になるといふと、歴史といふものが、例へば史記といふやうな歴史の體裁が出來るといふと、
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