范曄の後漢書から始まる。これは一つは材料が時代とともに増加するに拘らず、それを歴史に編纂する時に、從前の歴史と大差のない分量にしようとする爲めに、自然に簡單に省略する必要を生じた點もあり、一つは范曄の如き人は自分が名文家であるところから、なるべく己れの歴史を名文に仕上げようとする所から書き改めたといふこともある。今一つは范曄の頃には、その前に已に幾つかの編纂された歴史があつて、直ちに根本史料から編せずして、一度編纂されたものを再編した爲めに、段々文章を書き改めたといふこともある。當時でも根本史料から書いた沈約の宋書などは、割合に原文を書き改めずに書いてゐる。ともかくこの原文を書き改めるといふことが、已に歴史の編纂法に生じた一つの變化であるが、それが最も甚だしく現はれたのは、唐の初めに、唐の太宗の命によつて晉書を作つた時である。この時には、その前に已に十八家の晉書があり、それを寄せ集めて編纂したので、ますます原文とは遠いものとなつた。それと殆ど同時代に、李延壽の南北史が出來たが、これは南北朝の間に出來た多くの歴史を、益※[#二の字点、1−2−22]簡略にせんとした爲め、益※[#二の字点、
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