體裁は複雜に發達したのである。これに從つてその内容や編纂方法にも變化があつた。
 初め史記・漢書・三國志の間は、歴史を書く方法として、材料の取扱ひ方に一定の主義があつた。それは多く材料をそのまま歴史に書き込む方法である。もつとも材料をそのまま取り入れると云つても、皆な當時としては正確と思はれるものを取るのである。その中で、史記の如きは、今日から見れば傳説が大部分を占めて居つて、正確と云はれぬこともある。しかしその正確でないといふことは、今日の材料の取扱ひ方からして、それを史實として取扱はうといふ考から云ふことである。中古に文書が完全になつてからは、史實の取扱ひ方は易いことであるが、全く文書のない時代、口説で傳へられてゐた時代のことは、その口説を全く棄ててしまふと、史實が失はれるから、口説の中より正しいと思はれるものを取るより外はない。故に史記はそれを取るについて、雅馴といふことを主として取つた。これは傳説時代の歴史の取扱ひ方としては已むを得ぬ所である。ともかく史記はかくして出來たが、史記以外の漢書・三國志は、材料を取るのに、なるだけ原文をその儘存した。原文をいくらか書き改めるやり方は、
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