ことが出來ぬが、ともかく非常に澤山の書を集めて作つたには違ひなく、その中に多くの史料を含むことは、原本でない説郛でさへ、いくらかその中に史料としての著述を見ることを得ることによつても知られる。
この時、地理に關することでは、南洋に關する外に蒙古並びに西域に關する紀行類が多い。これは勿論元が歐亞にかけて大版圖を有した爲めで、創業の際の征伐に關し、儒者・道士が時の天子に召されて行つた紀行とか色々あつて、それは今日でも蒙古・中央亞細亞に關する有力な史料となつてゐる。
明になつて元史が出來たが、元史は歴代の正史の中でも最も評判の惡い歴史である。それは餘りに短日月に編纂された爲め、同一人の傳を二度書きなどして粗雜の點があり、又最も體をなさぬのは、文牘をそのまま修正せずに載せたので、文章が惡く、歴史の體をなさぬといふにある。元代は詔勅を蒙古語で出し、それを譯するには、古文を以てせずして、當時の俗語のままに譯するが、これをそのまま歴史に載せてゐることがある。かかることが攻撃されてゐるが、これはこの一代だけで、後にはかかることはなくなつたが、史料をその儘使ふといふことは、却つて唐以前の歴史編纂の原
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