あらゆることを網羅したものであるが、その制度を書くのに、その由來を記し、それに關係した事實までも記してゐる所から、今日僅かに殘存する殘缺でも史料として役立つことが多い。殊に今日の元史も大部分は經世大典によつたらしく思はれる。恐らく元代のことは大體經世大典によつて、今日我々が見ることの出來るやうになつたのであらう。清朝に至つて、元代の古い著述を搜索した時に、現存の經世大典の一部を書き拔いて特別な著述のやうにして世間に出したものが色々あつた位である。その他民間の編纂のものでも、この頃より叢書が盛になつた。これは昔の本をその儘集めて、それを一つの纏まつたものとする方法で、今日存するものでは、宋代の百川學海が最も古いものである。その中に入つてゐるものは各種のものに亙り、必ずしも歴史ばかりではないが、史料となるべきものが多い。宋代の役所の故事などは、百川學海に收められてゐるものからして知り得ることが多い。これは南宋の左圭の作つたものである。元末に至り陶宗儀が輟耕録を書き、元代の故事雜説を集めたが、彼は又説郛といふ大叢書を作つた。現存の説郛はその原本でないといはれ、彼の原本の體裁は之によつては知る
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