實際上必要がないものでありますが、それを見ますと、官海游泳術の祕訣が鄭寧親切に書いてある。さういふやうに、近代になると官吏生活といふものが大分複雜になつて來ました。
 その外に近代の官吏といふものが、官吏生活に滿足して居るかといふことが問題になります。昔は循吏などゝいつて、成績の良い人は宰相に擧げられ、宰相に擧げられて成績の上がらない人もあつたが、兎に角さういふ途があつた、それで一生懸命になつて官吏をやつたのであります。近來でもたまには特別の性質を持つて居つて、官吏で仕事をすることが面白くて死に物狂ひで官吏をする人がある。李鴻章などはさういふ人でありました。李鴻章の先輩曾國藩は、死に物狂ひで官吏をやつて居るものは李鴻章だといつて居ります。事實曾國藩ほどの人でも、李鴻章の如く死に物狂ひで役人をして居らなかつたのでありませう。それは官吏生活に併せて外の興味を持つて居るのが近代官吏の常であるからである。
 近代の官吏をする人、殊に地方官などは、普通三年位で罷めるものでありますが、それから續いてやる人もありますけれども、先づ支那では三年間も地方官をすれば、其の間に一生食へることを考へます。支那
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