様が乗移り、その運否天賦の呼吸で黒白《こくびゃく》の端的《たんてき》が現われる」
「大したものだ!」
関守氏が気合を入れたもので、がんりき[#「がんりき」に傍点]がいよいよ乗気になり、
「ごらんなせえな、額面が六個あって、一から六まで星が打ってある、一をピンとも言い、六をキリとも申しやす、さてまたこのピンからキリまでに、天地四方を歌い込んで、一|天《てん》、地《ち》六、南《なん》三、北《ほく》四、東《とう》五、西《せい》二とも申しやす、まずこの六つの数を、丁と半との二種類に振分けること前文の通り、丁てえのは丁度ということで、ちょうど割りきれる数がとりも直さず丁、割って割りきれねえ半端《はんぱ》の出るのが半――つまり一《ピン》は割りきれねえから半、二は割りきれるから丁、三が半で、四が丁、五が半ならば六が丁、という段取りなんで、おっと待ったり、このほかに五の数だけはごと言わずにぐと申しやす、五《ぐ》の目《め》というやつで――こうして置いて、この賽ころを左の手にこう取って、右に壺をこう構える、手が足りねえから恰好《かっこう》がつかねえ、旦那、その湯呑を一つお貸しなすっておくんなさい」
と言
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