大菩薩峠
椰子林の巻
中里介山
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)逆《ぎゃく》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)宇治|醍醐《だいご》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「口+卒」、第3水準1−15−7]
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一
今日の小春日和、山科の光仙林から、逆《ぎゃく》三位一体《さんみいったい》が宇治|醍醐《だいご》の方に向って、わたましがありました。逆三位一体とは何ぞ。
信仰と、正義と、懐疑とが、袖をつらねて行くことであります。本来は、まず懐疑があって、次に正義が見出され、最後に信仰に到達するというのが順序でありますけれども、ここではそれが逆になって、懐疑が本体になって、正義と信仰とが脇侍《わきじ》であり、もしくは従者の地位しか与えられていない、というところが逆三位一体と、かりに名づけたもので、三つ一緒に歩いているから三位の観を呈するまでのこと、内心に於ては必ずしも一体でなく、また一体ならんと予期してもいない
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