めてこれに近づこうとしない。そのくらいだから船中の誰もに親しみを持たないし、船中の誰もがまたどうも山出しのブッキラボウな青年で、且つ好んで長い刀をひねくり廻したりなどするものですから、気味を悪がってのけ者あつかいにしている。ただ一人田山白雲にだけは親しみを持つものですから、田山と二人が、別棟をこしらえて、植民地に住むというような有様です。しかし、柳田は田山ほどに世界を知らないし、また超世間の美術に没頭するという術《すべ》を持たないから、田山のために写生旅行の助手をつとめようという気にもならず、黙々として働くだけを働き、その合間には、長い刀を振り廻して、居合の独《ひと》り稽古をしているだけのものです。
柳田がすっぱ抜きをしているところへ、白雲が通りかかると、それに引き入れられて、同じように居合を試みてみたり、それが嵩《こう》ずると、真剣で型を使ってみたりするのでありますが、また時としては真剣や白刃を取らずに、素手でやわらの乱取《らんど》りを試むることなどがあります。ちょうどその場へ七兵衛が来合わせた時などは、非常な興味を以てながめていることもありますが、武術にかけてはさしもの田山白雲も
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