慶喜公も、ドッシリとここに納まって動かなければいいに、ややもすれば動きたがって腰が据らない、悲しいかな、今の徳川に、この二条城へ坐りきれる人がいないのだ」
かくて二人は、しきりに天主台の上から、飽かずに洛中洛外の風景と、二条城の規模を見渡しておりましたが、
「京都に於ける二条の城と、江戸に於ける東叡山とは、形式が違って立場は同じだ、この二条城を守りきれるや否やで、京都に於ける徳川の勢力が決する、東に於ては、よし江戸の城が落つるとも、東叡山に於て徳川旗下の意気の死活が示されるのだ」
と言いました。二人の慷慨の語気で察すると、この城を二人に任せる限り、幕府の社稷を死守してみせる意気込みは充分だけれども、その貫禄の備わらざることにじだんだ[#「じだんだ」に傍点]を踏んでいるようにも見られます。且つまた、これだけの備えがあって、人がないことを、三百年の徳川のためにも大息しているかのようにも見られます。
無名島に上陸した無名丸の乗組のうちに、書き漏《も》らされた存在として、柳田平治と、金椎《キンツイ》とがあります。
柳田は、最初から駒井船長が、虫の好かない唯一の存在でありましたから、つと
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