藤兄《ふじあに》いといって、姪《めい》を孕《はら》ませて子まで産ませて追ん出した上に、それを板下《はんした》に書いて売出した当代の甘いおやじさんだ、文書きの方では古顔なんだが、近ごろ拙者の子分同様になりやんした、よろしく頼む」
 高飛車に出られたので、鐚もあっけに取られていると、
「さあ、お爺《とっ》さん、こっちへ来て、芸娼院の人別に入れてもらいねえよ、これがお安いところの鐚公というおっちょこちょいだ、お見知り置きなせえ」
と言うから、鐚が木口の後ろを見ると、いかにも人のよさそうな老爺《おやじ》が一人、なべーんとした面《かお》をして、しょんぼりと控えている。その姿を見て、鐚が、なるほど姪を孕まして、板下に書いて売出しそうなおやじだ、至極お人よしだなと思いました。だが、いい年をして、木口あたりの手下になって、頭を下げに来る、老爺の人のよい姿を見ると、鐚も物の哀れを感じないわけにはゆきません。
 木口の後ろには、まだ、これを親分と頼むイカモノが多分に控えている。これらを押並べて、
「さあ、面《つら》が揃《そろ》ったら、ひとつここでパチリとやってくんな」
 当時、舶来の珍しいはやどり機械を据
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