こんな悲惨なことはあるもんじゃあございません。でも、人間の力で、日頃の心がけがよければ、逃れられないはずはねえとこう思うんですが、それに就いて皆さん、なるべく荒地を開いて、それに、ハト麦と、ジャガタラ薯とをお植えなさいまし。ハト麦は、世間並みの大麦や小麦と違って、肥料《こやし》がいりません。そうして、蒔《ま》いて僅かの間に取入れができます。その上に取穀《とりこく》が多いし、味がよろしいし、食べて薬用にもなるものでございます。種子はわしのところにたくさんございますから、分けてお上げ致しますよ。
 与八は、電剣先生から聞き覚えたハト麦の栽培法を、村人に伝授を致しました。それから、ジャガタラ薯も、まだ作り方を知らない人に教えてやりました。村人のうちには、ハイハイと聞いてはいるが、実行しない人も多くありましたが、与八は、それに頓着なしに、ハト麦の効能を説きながら、その種子を配り歩いています。
 饑饉というものは怖ろしいものですよ。わしらも子供の時に見ました。野原にちっとも青いものがありませんでな。みんな人間が摘《つ》んで食べてしまうからです。それでも足りないで飢《かつ》え死ぬ人が多くありまして
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