ごころで言ったのに、頭ごなしにやられたので、何がお気に召さなかったのか、それがわかりません。見れば神尾は三ツ眼で、行列を睨《にら》んだまま、怒気と、軽蔑を満面に漲《みなぎ》らせている。
 馬鹿! 時勢が険悪だと言ったところで、天から矢玉が一つ降って来たわけではないぞ、地から薩長が湧いて来たわけではないぞ、それに今から食糧の心配をして、どんどん焼を食いたさに、こうして早朝に時間をつぶし、仕事をつぶして、行列を作るとは何たる醜態だ! これが江戸っ子の仕業か! 武士は食わねど高楊枝も古いものだが、およそ江戸っ子の全部が武士でないまでも、江戸っ子は江戸っ子としての恥を知らなければなるまい。こいつら、江戸っ子の皮をかぶった江戸っ子ではあるまい、他所《よそ》から流れ込んだ江戸っ子の居候共だろう。山猿や、百姓共が、ガツガツしてこのザマなんだ、少なくとも、二代、三代、江戸の水を飲んだ奴に、こんな恥を知らぬ奴はないはずだ。面《つら》を見てくれよう、面を見ればわかる、江戸っ子の面よごしめ!
 神尾主膳は、こう思うと、ズカズカ近寄って、その行列の面《つら》を二つ三つ、つかまえて調べてみましたが、
「御安直な
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