りつきました。

         六十四

 それからしばらく、侵入者は、さっぱりとした取合せのよいお膳について、箸《はし》を与えられました。その傍らにお給仕役をつとめながらの若い老尼が、あやなすように話しかける。
「あなたは、どちらからおいでになりましたの」
「関の大谷風呂に暫く逗留しておりました」
「お国はドチラですの」
「東国の方ですがね、諸所方々をフラつきましたよ」
「お目がお悪い御様子ですが」
「はい、目がつぶれてしまいましてね、つまり天罰というやつなんですよ」
「どうして、そういう目におあいになりましたの」
「十津川の騒動の時にやられました」
「ああ、あの天誅組《てんちゅうぐみ》の騒動に、あなたもお出になりましたか」
「はい、十津川では天誅組の方へ加わりました、中山卿だの、それから松本奎堂《まつもとけいどう》、藤本鉄石なんていう方へ加わりました」
「まあ、それは頼もしい、天朝方でございますね」
「なあに、頼もしく入ったんじゃありませんよ、頼まれたもんですからツイね、つまり、人生意気に感ずというわけなんでしょう」
「その前は、どちらに」
「その前は壬生《みぶ》におりました」
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