られるのですから、老尼にも一点、憐憫《れんびん》の心が起ってみると、恐怖心の大半が逃げました。その逃げたあとへ、若干の勇気というものが取戻されたものですから、やや本心にも返ったし、本来、こうして、この年で、水気《みずけ》たっぷりな侘住居《わびずまい》をしているくらいですから、心臓の方も、さのみ老いてはいなかったのでしょう。
「それはお気の毒な、まあ、ちょっとお起きあそばせ、おぶ漬を一つ差上げましょう、何ぞ粗末な有合せで」
「そうですか、それはかたじけないです、では、御免を蒙って」
と、寝ていた弱気の侵入者は起き直りましたが、ほんとうにこれはこの世の人ではない、病みほうけ、疲れきって、その様、全く哀れげに見えるものですから、老尼はいよいよ気になりました。
侵入者は、起き直ったとはいうものの、立って挨拶をしようではありません。蒲団《ふとん》の上に突伏《つっぷ》すように坐り込んだなりで、物を考えているよりは、哀れみを乞うているに似たこの姿がいじらしい。
侵入者をいじらしがるわけもないものだが、老尼は、もうこっちのものだと思いました。傷ついた虎は吠える犬にもかなわない、という見極めがすっか
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