心うごかす人多かりけり、病を受けて命をはりける時、念仏すすめければ申すに及ばず、枕なるさほにかけたる物をとらんとするさまにて手をあばきけるが、やがて息たえにけり、法性寺辺に土葬にしてけり、其後、二十余年経て建長五年の比《ころ》、改葬せんとて墓をほりたりけるに、すべて物なし、なほふかくほるに、黄色なる水のあぶらの如くにきらめきたるが涌出《わきいで》けるを、汲みほせどもひざりけり、その油の水を五尺ばかりほりたるになほ物なし、底に棺ならんと覚ゆる物、鋤《すき》にあたりければ、掘出さんとすれども、いかにもかなはざりければ、そのあたりを手を入れてさぐるに、頭の骨わづかに一寸ばかりわれ残つてありける、好色の道、罪ふかきことなれば、後までもかくぞありける、その女の母も同じ時に改葬しけるに、遥かに先だち死にたりける者なれども、この体かはらでつづきながらにありける」
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そこへ、また一つの魔がさして来ました。今までのは、偶然がもたらした内からの魔でありましたが、今度は外からさした魔であります。
「あれ、何かさし入りました」
書巻の眼は鞠《まり》のように飛んで、戸締りの桟《さん》
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