し、あたりちかく聞きおどろくべき庵もなければ、いかにすまふとてもむなしからじと思ひて、ねんごろにいひて、つひにほいとげてけり、力及ばで只したがひゐたるけしき、ひとへにわがあやまりなれば、かたはらいたき事かぎりなかりけり、したしくなつて後、いよいよ心地まさりて、すべきかたなかりければ、さてしも、やがてここにとどまるべきものならねば、よくよく拵《こしら》へ置きて男帰りにけり、さてまた二三日ありて尋ね来てみれば、かのすみかもかはらであるじはなし、かくれたるにやとあなぐりもとむれども、つひに見えず、さきにあひたりしところに歌をなんかきつけたりける、
世をいとふつひのすみかと思ひしに
なほうき事はおほはらのさと」
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それから物ぐるわしくなったこの若々しい老尼は、六道も灌頂も打忘れて著聞集に引かれて行くことが浅ましい。
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「山に慶澄註記といふ僧有りけり、件《くだん》の僧の伯母《をば》にて侍《はべ》りける女は、心すきすきしくて好色はなはだしかりけり、年比《としごろ》のをとこにも少しも打ちとけたるかたちをみせず、事におきて、色ふかく情ありければ、
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