言ったかと見ると、婆さんはやにわに、腰に巻いた真紅のゆもじを引脱いで、真裸になったと覚えたが、身を躍《おど》らしてグラグラと沸騰する大釜の中へ、われとわが身を投げ込んでしまいました。この早業には、さすがの竜之助も、
「あっ!」
と言って見えない眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》ったが、見えないはずの眼がありありと見える。釜の中では老婆の肉が盛んに煮えつつあるのです。なるほど、これは肥え太った美肉とは言えないが、骨附きの痩肉《やせにく》ではあるが、肉は肉に相違ない。肉の持合せに不自由はないと言ったが、なるほど、これはお手の物だから、携帯洩れのあろうはずはない。これ以外、別段、野菜の附合せ物を入れたりするわけでもなし、砂糖、醤油、味噌、割下《わりした》といったような調味料は、いささかも加入されないが、肉そのものは、骨ごとよく煮上っている。竜之助を、あっ! と言わしめた瞬間、また以前に変らぬ老婆の声があって、
「いかがでございます、よく煮えました、あなた様も、一片《ひときれ》召上れ」
 いったい、ドコで物を言うのかと、見えないはずの眼をみはって、そこらを見廻すと、婆さん、
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