れによって、日月章の錦旗|四旒《しりゅう》、菊花章の紅白の旗おのおの十旒を製して薩州屋敷に納めるよう――世間へは、薩州家の重役が国への土産《みやげ》の女帯地を求めるのだと申して置け」
「委細、心得ました、必ずともに御信用に反《そむ》きませぬ、万一、手ぬかりを生じましたその節は、この痩首はなきものと、疾《と》うに覚悟をきめておりまする」
「町人にしては惜しい度胸、昔の天野屋に優るとも劣らず、では、しかと申しつけたぞ」
「有難き仕合せにござりまする」
ここで、不破の関守氏はまたも頓首膝行の形で、三傑の御前を辞して、次の間に辷《すべ》り出て、三太夫にまで鞠躬如《きっきゅうじょ》としてまかりさがってしまいました。
五十八
不破氏が、ここまで食い入って、ここまで信用を掴《つか》み得たという手腕のほどは甚《はなは》だ驚歎すべきことでありますが、ここに於て、東西に二つの錦旗の問題が隠見して来たことは、この小説の作意ではありません。
すなわち、上野の東叡山輪王寺御所蔵の錦旗を盗まんとする不逞《ふてい》の徒が存在するらしいことと、ここでは岩倉三位合意の下に、玉松操《たままつみ
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