さお》に製作せしめた錦旗の図面によって、薩摩と長州の傑物が二人、町人にその製作を命ぜんとしていることであります。これは作意ではなく、史実であり、明白なる記録でありますが、錦旗そのものも、いまだ名分を備えざる間は、ただ一個の織物に過ぎませんから、誰がどう扱おうとも、さして問題にならない分のことです。
 さても、件《くだん》の密談が終って、洛北岩倉村から、またも馬で帰る両士の馬上ながらの会話を聞いていると、次のようなものであります。まず品川弥二郎が言いました、
「岩倉三位には恐れ入ったねえ。実を言うと、わたしは日頃あなたから、岩倉三位はエライエライと言われるものだから、よっぽどの人物と思っていましたがねえ、今日はじめて、あの中庭の柴戸から、ひょっこり姿を現わしたその人を見て、非常な幻滅を感じましたよ、あの通り、背は低いし、色は黒い――背は低く、色は黒くても、人品とか、男ぶりとか立勝《たちまさ》ったものがあればまだしもだが、ひょっこり着流しで、鍬《くわ》を下げて面《かお》を出したところを見て、非常な失望を感じましたよ、こんな風采の揚らない男に、いったいどれだけのエラさが隠れているのか、こんな
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