とを追うて仔細に吟味をして見る。
不破氏は最初の姿勢で、ほとんど膝行頓首の体制のままですから、いま大久保が大和錦と引合わせている彩色の図面が何物だかわかりません。わかろうとすることが重大なる失礼ででもあるかのように、恐れ慎んで面を上げないのでありますが、品川弥二郎は甚《はなは》だ無遠慮で、果ては彩色の絵図面を横手に持って、大久保の繰りひろげた大和錦を片手で引張って、押しつけるようにして較《くら》べて見るものですから、側面から見ると、その彩色の絵図面が何物であるかがよくわかるのであります。
つまり、それは錦の御旗《みはた》を描いたもので、大和錦はこの御旗の地模様をつくり、ただ、図面と異なるのは、それに金銀の日月が打ってあるのと、ないのとの差であります。
「いや、これでよろしい、寸分相違がない、見事な出来でござります」
と大久保が保証すると、品川も頷《うなず》く。三位も満足の体《てい》。その時に大久保が改めて、
「では商人、この方式によってしかるべく頼むぞ、恐れ多き事ゆえに他言は固く無用、万一、外間に洩《も》るる時は、その方の命はなきものと覚悟せよ。この絵図面もその方を信じて手渡す、こ
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